数学解説
【最新】東大理系数学 2025年 大問2 解説
「東大の理系数学を見たときに,初見でどのように考えるべきか知りたい!」
そんなあなたへ向けて,「医学部・旧帝大専門塾しりうす」の塾長が,最新(2025年)の東大理系数学の大問2を徹底的に解説します!
当ブログにおける解説とは?
通常の解説は,「問題の正解がどうして正しいのか」を中心に説明しますが,それでは「解答の正しさ」は納得できたとしても,「試験時間内に解答を自力でたどり着くにはどうすれば良いか」はよくわからないということになりかねません.
しかし,入試では自力で解答が書けて初めて得点となるわけですから,解答が正しいことだけでなく,「実践的にはどうするのか」を深く理解し,習得する必要があります.
そこでしりうすでは,
- 初見で問題を見た時,どのように問題を分析し,「答案の1行目」に至るのか
- たくさんの解法をどのように整理し,問題に応じてどのように選択するのか
を徹底的に深掘りし,見たことがない問題に対しても実行可能な思考法を重視して指導しています.
したがって,ここでも「答案の1行目」に至るまでの思考プロセスのみに絞って解説していきます.
では,本題に入っていきましょう!
東大理系数学 2025年 大問2 解説
本日解説する問題はこちら!
問題の分析
塾長が入試数学の問題と向き合うとき,最初に必ず実行するのが,問題の分析です.
問題の分析とは,「答案の1行目」を決めるために,下図の3つの視点から問題を多角的に捉える作業のことであり,とくに非典型の初見の問題に対し,大変有効な手法です.
※ 細かく言うと,「鉄則」の中には,「幾何と代数の両眼」や「実験」がありますが,これらについてはここでは割愛します.
これを本問に対し実際に行うと,下図のようになります.
続いて,これらの分析結果を使って,問題を解き進めます.
各問解説
(1)
これは典型題であるため割愛します.(2)への誘導だと考えるのが自然でしょう.
(2)
本番は(2)です.
まずは「求めたいもの」の確認から
手順としては,まずは求めたいものから確認します(実はこれは鉄則です).今回は,求めたいものが「極限」であり,典型題である(1)があることを踏まえると,これは「極限の定石」の中の
2. はさみうちの原理
を使う問題だと考えるのが自然ですね.
「はさみうちの原理」の右辺を求める
そこで,まずは,(1)の不等式にlogの中身を代入して,不等式の最右辺を作ろうと考えた受験生が多かったのではないでしょうか?ここまでは,たとえ定石として言語化できていなくても類題経験や過去問演習によって自ずと辿り着くのではないかと思いますが,しりうすでは,念のため,次の定石としてお伝えしています.
実際に,logの中身を不等式に代入して,両辺を定積分しn 倍すると,
のようになるはずです.
ここから「はさみうちの原理」に持っていくには,最右辺の極限を計算しなければならないわけですが,式の形がなかなか複雑で,緊張感のある試験本番ではどのように計算すれば良いか迷った受験生もいたのではないかと思います.
このようなときこそ,焦ってアドリブに走るのではなく,落ち着いて極限を計算する際の定石を順に考えていくことが大切です.
ここで,具体的な極限計算に進む前に,必ず実行しなければならないことがあります.それが
です!
※あまり知られていないかもしれませんが,実は,極限計算は,不定形によって変形の方法が異なります.たとえば,同じ
であっても,x→∞とすれば,∞/∞の不定形となり,分子分母の発散速度の比較によって,全体として正の無限大に発散することが分かりますが,x→0であれば,0/0の不定形となりますので,「発散速度の比較」は通用せず,「微分係数の定義」を用いて求めることになります.
このように,不定形の違いによって,計算手法が異なるので,最初に不定形を確認する必要があるのです.
そこで,まず,どの不定形か確認すると∞×0の不定形であると分かります.普段から極限の不定形を意識していれば,∞×0の不定形は処理が難しいことがわかりますので,最初の(1) 公式系を考えるために,
- 0/0
- ∞/∞
のどちらかを目指して変形することになりますが,指数関数2^(n+1/n)が含まれていますので,次の定石
に従って考えることになるでしょう.
※ 定石<指数関数を含む極限>の各手法に対応する例題は次のとおりです.これらの問題は全て「指数nや1/nが肩に乗った形」をしており,いずれもn→∞を考えていますが,計算手法が全く違うことがわかるでしょう.やはり不定形をまず確認することが大切なのです.
しりうすでは,このように,定石と例題を関連づけて理解することで,具体例を通して普遍的な手法を習得していきます.
本題に戻ります.
上記例題からもわかるとおり,等比数列の極限なら∞/∞の不定形もあり得ますが,本問ではn→∞で指数関数2^(n+1/n)が発散しないので,0/0を目指す方が良いと考えられます.
したがって,0/0の形を作って,微分係数の定義の利用を考えるのが次のステップとなります.
※ 一部の項を∞/∞の不定形として処理することも可能ですが,少し慣れが必要であるだけでなく,式を見ながら項をうまく組み合わせなければならない点でやや場当たり的と言えるでしょう.入試数学は限られた時間内で確実に正解に辿り着かなければならないので,再現性があり汎用性の高い解法を重視する方が良いと考えています.この観点から,筆者は「0/0の不定形→微分係数の定義の利用」を選択しました.
0/0の不定形の作るためには,1/nを作れば良いですね (これは経験がある方も多いでしょう).実際に1/nをどんどん作ってみると,
のように,きれいに1/nが作れることが分かります.この状態で,n→∞とすれば確かに0/0の不定形となりますので,あとは微分係数の定義に持っていけばよさそうです.
ここで,
「こんな複雑な式でどうやって微分係数の定義に持っていくの?」
と思われる方もおられるかもしれませんが,実は,
極限計算を微分係数の定義に帰着させるパターンは,どんな問題でも全く同じ方法で解くことができます!
青チャートやFocus Goldには載っていないのであまり知られていない解法ですが,再現性が極めて高くかつ難しくないので,受験生には身につけていただきたいです!ただ,記事の中で説明を始めると本題から逸れてしまう上に少し長くなってしまうので,今回は割愛させていただきます.詳しく聞きたい方は,ぜひ一度医学部・旧帝大専門塾しりうすにお越しください!
いずれにせよ,これを実行すると,極限はlog2-1/2となります.これで,「はさみうちの原理」に必要な右辺は求めることができました!
「はさみうちの原理」の左辺を求める
続いて,「はさみうちの原理」の左辺を求めます.これは,誘導が全くないので自力で考えなければならず,本番はなかなか大変だったのではないかと思います.
しかし,このようなときこそ頼りになるのが今まで蓄えてきた「定石」たちです!
実は,積分不等式の問題には,先ほどの「分析図」(再掲)
にも載せたように,次のような確固たるアプローチがあります.
きちんと説明すると120分授業1回分となってしまうので,ここでは簡単な箇条書きによる説明に留めますが,それぞれ
- 面積評価→定積分と長方形や台形の面積を比較することで,定積分を評価.東大(2007)・東京科学大(旧東工大 2023)・東北大などで出題歴あり.
- 代数処理
- 置換積分→まずは被積分関数を置換することを考える.東大(2023)・京大(1975, 2001後期)・東京科学大(旧東工大 2008後期)・大阪大(2015)など出題多数.
- 関数分離型→被積分関数の一部を定数とすることで,不等式を作る.東大(2010, 2023)・阪大(2015, 2019)・広大など出題多数.
- 中身変更型→被積分関数の一部をすり替えることで,積分の計算が可能となるようにする.東大・東京科学大(旧東工大)・大阪大などで出題歴あり.
のような意味を持ちます.
本問も,これに従って順に考えていけば,
- 面積評価→被積分関数が複雑でグラフが描けそうにないので難しそう...
- 代数処理
- 置換積分→x^(1/n)を置換するとどうか考えるが,積分区間にnが現れることになってしまい,うまくいかない.
- 関数分離型→一部を定数に変えてもうまい不等式を作ることができない.
- 中身変更型→上2つが難しそうなので,これかな?
というように,「中身変更型」に帰着することができます.あとは,「中身変更型」で使うべき「不等式の証明」の定石
を順に考えていけば良いだけです.
※ まとめている定石だけを見たら,考えるべきことが多く複雑に見えるかもしれませんが,1つ1つ例題を通して学べば手順や思考法の必然性がわかるので,これを意識しながら演習をすればきちんと身につきます.しりうすでは,これを豊富な具体例とともに繰り返し登場させることで,生徒さんたちに確実に身につけてもらう工夫をしています!
本問に対して,上記の「不等式の証明」の定石を適用し,上から順にしっかり考えていくと,1. 形から入って評価するにおける
- 有名不等式の利用→相加平均・相乗平均の関係の利用
- 凸性の利用→logは上に凸
のどちらかに辿りつくことができるはずです!ここまで来ることができれば,東大受験生なら解き切ることができるでしょう.
※どちらでも解くことはできますが,「相加平均・相乗平均の関係の利用」は「逆数」のイメージが強い受験生が多いため,やや気がつきにくかったのではないかと推察します.logの凸性も,n変数の相加平均・相乗平均の関係の証明などでこれを用いたことがあるか,もしくは,「凸不等式」を意識的に使う練習を積んでいなければ,試験本番で辿り着くのは難しかったでしょう.やはり,定石として言語化しストックした上で,抜けがないように上から順に適用していく習慣を身につけることが大切であると言えると思います.
(2) の別解について
最後に,別解についてもコメントしておきます.
さきほどの「分析図」において,logの積分の計算手法として,部分積分を挙げました.
実は,部分積分を実行すると,(1)の誘導に乗ることなく答えを求めることができてしまいます!
したがって,「(1)の誘導に乗らない」という勇気が必要ではありますが,「部分積分」が初手として最も自然に感じた受験生もいたかもしれません.
本問は色々な解法で解くことができる問題でしたが,その分試験会場では難しく感じた受験生も多かったのではないでしょうか.
まとめ
以上です!ここまで読んでくださったみなさん,ありがとうございました.
「確固たる解法体系を学ぶことで,解法が『ひらめく』ものから『論理的に選ぶ』ものへと変わる」
ということが,少しでも伝わっていれば嬉しいです.
また,本記事を読んで医学部・旧帝大専門塾しりうすやその授業にご興味を持ってくださった方は,ぜひ,2025年4月新規開講の数学特講をご検討ください!
数学特講は,山口市にお住まいの受験生を対象に,東大・京大・旧帝医医の理系数学に特化した集団授業であり,全国トップクラスの数学力の養成を目的としています.
本記事に登場した定石も,すべて余すことなく解説・演習します!